"建築基準法の歴史は、地震の歴史と言われるほど大きな地震が起こるたび建築基準法は改正され、建物の"耐震化"は、耐震工法の開発や部材の改良などにより日々進化しています。

こうして日本は、地震の研究・耐震建築では世界に誇ってよい水準にあると言っても過言ではないでしょう。
さらに最近では・・・住宅の瑕疵保証や・瑕疵保険などで安全・安心を建物に付加する事ができます。
ところが、宅地は、建物を保証する際に地盤調査を義務づけるようになりましたが、これはあくまでも建物の基礎地盤としての強度を調べるもので、宅地の全体的な安全性を調査するものではありません。

土地・地盤に関して、崖崩れ等による災害から国民の生命を保護する法令として、
昭和37年に「宅地造成等規制法」
昭和44年に「急傾斜地法(急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律)」が施行されました。

それ以前の造成工事では明確な技術基準がなかったため、ところによっては盛土の"地盤の沈下’"や"擁壁の変状"が見受けられる状況もあります。

今一度、自分の財産である宅地(土地)そして近隣周囲にある傾斜地・擁壁にも是非注意を払ってみてください。

現在わが国では=急傾斜地崩壊危険箇所=が多数確認されています。
がけ、擁壁及び土留めの危険度判定基準
がけ・擁壁・ブロック塀等の安全化(建設局)

(※クリックすると、PDFファイルが開きます)

◆宅地造成規制法で認められている→練り積造擁壁・組積材

宅地造成規制法では、練積み造擁壁の設置が認められています。(第8条)
この基準内容は、背面の土圧、擁壁の勾配、高さ、壁の厚さ、根入れ深さなどを規定しており、練積み造擁壁を重力式擁壁と考えて定めているものです。
組積材としては、間知石・玉石・野面石のほか、間知コンクリートブロックなどが使用できますが、大谷石などの切石やレンガなどは、練積み造擁壁の組積材として認められていません。
(規制法による擁壁の設置を必要としない「がけ」に設ける石積は、どのような組積材でも使用できます)
参考資料サイト:練積ブロック設計要領(経験に基づく設計法)

宅地造成等規制法・同施工令

この法律は、宅地造成に関する工事について、災害防止のために必要な規制を行うことを目的としたものであり、建設大臣が指定する「宅地造成工事規制区域」内における宅地造成工事について適用されるものです。

また一般に法令でいう、「宅地」の定義ですが・・・
「農地、採草放牧地および森林ならびに道路、公園、河川その他政令で定める公共の用に供する施設の用に供せられている土地以外の土地をいう」となっておりますので、単に住宅用地などに限定している意味ではありません。
宅地造成規制法(リンク)
宅地造成基礎法 重要事項説明書補足資料
(※上記をクリックすると、PDFファイルが開きます)

地盤調査方法

【ボーリング調査】
ボーリングして地層の深いところにパイプを打ち込んで、土を採取します。この時に打ち込む方法や記録の取り方を基準化したものが、ボーリング調査です。

==ボーリング調査のしくみ==
土を採取するのに140ポンド(63.5kg)のハンマーを、30インチ(76㎝)の高さから、自由落下させる方法を基準にして、12インチ(30㎝)貫入するのに要するハンマーの打撃回数を測定することを定め、この打撃回数を『N値』と呼ぶようにしたのが、標準貫入試験です。

この標準貫入試験が日本で行われるようになったのは、昭和27年ころからで、この試験方法が昭和36年に日本工業規格(JIS)に制定されるようになりました。

このボーリング調査のときに、試験用サンプラー(パイプ)によって地中から土を取り出して、土の状態を観察することが出来ます。
現在、このN値によって土の工学的性質を判定しています。

〔土質標本:サンプリング〕

〔ボーリングデーター:土質柱状図〕

ボーリング柱状図を読む

土質柱状図、いわゆるボーリングデーターは、土質や基礎関係の業務を専門している人だけに限らず一般の設計・現場技術者にとっても、とてもなじみの深い資料で、構造物の設計あるいは工事の計画を行う時に欠かすことができないものです。

このボーリングデーターは、その場所の地盤構成、各土層の硬さや締りの程度、土質の種類、地下水など、多くの情報が記載されています。
またボーリングデーターは、基礎の設計や山留めの施工計画等にも使います。

ボーリングデーター(柱状図)を読むにあたって
〔土質区分〕は、実質の土(サンプリング採集したもの)を観察によって土質(土の性質)を記載しています。
土質名や土質記号は、建築学会や地質調査技士の資格制度によって、統一されています。
ただし、粒度試験をやっての厳密な土質分類ではありません。
表記方法で「~混じり」とか「~質」などは、均質な地層でない時の表記方法となります。

〔土質区分コード表〕コード・分類名及図模様は国土交通省で定められた表記方法です。
土にも名前があり、土粒子の大きさと、それが含まれている度合いによって決められています。
この土の名前から、その地盤の性格や性質を推定することができます。

しかし、この土の名前を正確に定めるには、粒度試験(粒度分析)を行う必要があり、この試験は結構手間がかかり、それほど簡単なものではないので、粒度試験を行わずに簡単な手法で土の名前が決められる方法があります。

土粒子の大きさによって土が分類されていて、土粒子の直径によってこのような

コロイド0.001mm以下の土
粘土0.001~0.005mmの土
シルト0.005~0.075mmの土
0.075~2.0mmの土
礫(レキ)2.0mm以上の土

土粒子が混合して、自然土が出来上がっています。
自然土の名前は次のような方法で名前を判定しています。

粘土に近い土土を手のひらに取って指先で練ると、表面に光沢が現れる。
コロイド部分が多いと指先がすべすべする
シルトに近い土砂土で指先を押し潰すと、水分がなくなり、さらさらになる。
肉眼で見ても粒子が見分けられる。細かい粒子の砂の場合は、手の上にのせ、水滴を加えた後に、手で揺らすと、土と水が分離する。
また、指先で練ると、ざらざらした粒子が感じられる。
砂質粘土砂分を含んだ粘土。
全体は粘土分の多い土であるが、指先で練ると、わずかに砂の粒子が感じとれる。
砂質シルト水分を
含んだシルト
全体はシルト分の多い土であるが、指先で練ると、中に砂の粒子が感じとれる。

土の粒子が大きい地盤ほど支持力が大きく沈下しにくいので、水を透しやすいです。
だからこのような土で出来ている地盤では、地下水が流れやすく、地盤を掘削すると、多量の湧水が出ます。
水源の井戸の水なども、こういう地盤(砂や礫地盤)から採水しています。
粘土質に近い地盤ほど水を透しにくく、圧力を加えても含んでいる水分を排出するには、長い時間を要します。
つまり地盤が荷重を受けることで、徐々に起こる沈下=圧蜜沈下を起こす地盤であると云えます。

標準貫入試験N値

決められた質量のハンマーを決められた高さから自由落下させて、その打撃回数をN値として表記しています。
(JIS規格によって制定されています)
このN値から、軟弱地盤判別のほか判断・推定される項目がたくさんあります。
 例】地盤の安定性、杭先端支持力、液状化簡易判定、沈下量、地盤改良・地盤補強の検討→効果・判定・・・etc
またこの数値を元となって、構造設計の設計者が基礎形式(直接基礎 or 杭基礎)の選定や、支持層の選定・工法選定を行い、また杭の支持力式はN値式からなっています。
工事施工する側も、このN値によって、根切り(掘削)方法や山留め工法・山留め壁を検討して着手計画に入ります。(N値による地盤の評価は、砂・粘土によって違いがあります)
〔孔内水位とは・・〕その地盤の地下水位の深さを示しています。
水位の列を見ていただくと▽印で表示しています。

スウェーデン式サウンディング(SWS)(SS)試験

戸建てなど住宅地の地盤調査手法として採用されることが多くなってきています。(JISで規定されている工法です)

SWS試験は
地中にロッドを貫入させて、土の抵抗を知ろうというものなので原理としては・・・鉄棒を手で押し込んだ時の感触から土の抵抗を感じる事と同じです。

SWS試験ではこの抵抗を、荷重の度合いと回転数から客観的に数値化し記録して、それをある数式で換算することによって、N値(換算N値)という土質工学の数値に置き換えて軟弱度を判定する基準に仕上げます。

==スウェーデン式試験のしくみ==

人力(あるいは全自動)で、ロットの先端に取り付けたスクリューポイントを、定められた各質量の重りで自沈する静的載荷による沈下測定と、続いて定量の載荷のまま、ハンドル回転で貫入させ、25cmの長さを貫入させるのに要したロッドの半回転数を記録して、これを1m貫入量に換算した値を求めるもので、比較的安価で簡単な試験法です。

【長所】
・他の貫入試験に比べ貫入能力が高い
・機材が手軽であるため、運搬・移動が楽である
・試験方法が複雑でないため、熟練者を必要としない
・作業空間が小さくて住む
・比較的安価である

建設省建設経済局では軟弱地盤を判別する目安として、粘性土では100キログラム以下の荷重でロッドが貫入するもの(換算N値3以下)としています。
また砂質上では回転数(180度回転を1回とする)が50回以下のもの(換算N値5以下)としています。
これらの数字が報告された場合は、何らかの地盤沈下対策が必要だという指摘もあったりします。

→SS試験データ(サンプル)

もし地盤補強や地盤改良の工事が必要となった際には、スウェーデン式サウンディング試験だけに頼って調査~設計のプロセスに入らずに、別の試験などで追加試験を行う方が、間違いないと言えます。

上記理由として・・・
SS試試は比較的安価なのですが、把握できる事が限られている為判定に必要な情報のすべてを得られるわけではありません。
また基本的に地盤調査技士によって行われますが、評価的に個人差が生じる事があります。
例えば・・・
安定側に判定しがちな調査員がいたり・・・

また逆に安全率を見込んで地盤に‘要補強’という考察になったりします。
地盤調査技士登録証(リンク)

Point!!

地盤の報告書があるからとSS試験の過信は禁物であると云われています。
SS試験は調査の際にデメリットもあります。
地中に障害物等があった場合や、隣接の基礎擁壁の基礎にあたったり、見逃したりすると調査は適正なものとなりません。
中高層の建物では調査の深さも絡んでいるので、現在では一番信頼のおける、ボーリング調査の実施が殆んどであることを知っておいて下さい。

PS:その他表面波探査法という波動を使った調査方法もありますが、表面波探査法も万能ではありません。
測定が難しいケースもあり、また正確に支持層の位置を見つける必要がある場合は適していないと言えます。

【受付時間】9:00〜19:00/月〜土曜(日祝日休)